「…夏梨名ちゃん」
「ぁ、はい‥」
やば、
ボーっとしてた。
「………」
「‥栗塚さん?」
何?
じっと私を見る栗塚さん。
「温泉、まだ見てないよね?」
「は?ぁ、は、はい……」
急になんだ。
「ぁ、俺も見てない~♪行こっか~♪」
タタッ、と走って行ってしまった桐谷君。
「私達も行きますか……」
ーぽん
頭の上に、
暖かい感触。
クシャリ、と私の髪を撫でた栗塚さんの顔は見えない。
「…うん。行こっか」
頭から手を離して歩いていった栗塚さん。
…なんだ。
バレてたのか。
過去の事なんて、
もう無かった物にしてるつもりだったのにな……
少しだけ残る頭の上にのった感触に、
少しだけ慣れない暖かいこの気持ちに、
少し嬉しく思いながら、私は2人の後を追った。


