「夏梨名ちゃん、…放火事件の事、覚えてる?」
帰り道、
栗塚がこう切り出した。
覚えてます、と言うと栗塚さんは真面目な顔で続けた。
「石谷…あの犯行グループなんだけど、アイツ等の本当の目的は五星工場長だったろ?」
「はい」
「なのにわざわざ遠回りな犯行をした。だけど他の放火された家は被害者は出ていない。」
確かに、そうだ。
「確かに…よく考えてみればおかしいですよね。石谷達の性格上、そんな遠回しな犯行をするとは思えない。」
「だろ?
もしかしたら目的を果たす前に捕まってたかもしれない。…それに、最後の最後で関係のない夏梨名ちゃんを巻き込んでる。今までの綿密な犯行に比べたら随分荒々しいと思わないか?」
「思います。…もしかして栗塚さん、犯人が他にいると思ってます?」
今までの栗塚さんの理論を聞けばそう思わされる。
「いや、犯人は石谷達だ。本人達も認めてるしね。…ただ、俺が考えてるのはもしかしたら“計画”を考えた人間がいる。ってこと」
!!
「犯罪計画を石谷達に教えた人物がいるって事ですか…!?」
だとしたら大変な事だ。
「あくまで推論だけどね。」


