「………」




栗塚は、何も言わなかった。




それが月詠にはありがたった。




何も言わず、
栗塚は月詠を自分の胸へ引き寄せた。




月詠も、抵抗はしなかった。




月詠の後頭部を優しく撫でて、栗塚は言った。




「…君の好きなように生きればいい。それがどんな答えでも、俺は何も言わないよ。君の人生なんだ。君の生き方に俺は口出ししない……」




栗塚さんの、
あまり抑揚のない声は、すんなりと私の胸に落ちて、




「…はぃ………」




思わず、そう言ってしまった。




噛みしめていた唇を離し、息を吐く。




すると、
目から雫が落ちた。




ぴんと張り詰めていた糸が切れ、感情が溢れ出す。




ずっと、




自分の人生に纏わりつく“夏梨名”の文字、




今も、
この名は嫌い。




だけど少しだけ、
この名に感謝した。




この名がなければ、
この人に会えなかった。




しぃや神田、桐谷君




遥に凜に鈴




たくさんの中で、本当に大事な、大切な人達を知ることが出来た。




それはきっと、
この名のおかげ、




そして気づかせてくれたのは、




栗塚さん、貴方ー‥