ざぶーん。ざぶーん。


波の音がする。



私は気がつかなかったけど、ここに来ておばあちゃんのことを思い出す度に泣いていたのかもしれない。



「名前は?」


急に話しかけられると、びっくりする。


「・・・祈里。矢口祈里」



「祈里か。俺、工藤丈留(クドウ タケル)」


「俺、今日からこっちに引っ越してきたんだ」



そうなんだ。

だから、見たことがなかったんだね。



「・・・あのさ。言いたくなかったらいいんだけど・・・。なんかあった?」



なんでだかなんてわからない。


でも、この人になら・・・
丈留になら話しても‘そんなこと?’なんて言われないと思った。



気がついたら、私の口が勝手に話始めてた。