しかし、その思いは土方の部屋に足を踏み入れた瞬間、打ち砕かれることになる。


他の誰でもない土方の手によって。




「これを…日野に、ですか…?」




ずしりと重くのしかかるそれ。

手渡されたものに、鉄之助は信じられないといった表情で土方を見上げた。

土方は鉄之助に背を向けたまま小さく頷く。



日野といえば土方や局長であった近藤勇たちの故郷。



ここに来るまでの道程で一度立ち寄ったことがある。


幼き日、ここらで悪さをしながら育ったのだと、酒を流しながら珍しく上機嫌で話していた土方の姿が鉄之助の脳裏へ鮮明に甦った。