それから一時間後、




実は自分の口から朔斗に腱鞘炎のことを言っていない。




言おうとしたけど、怖くなって言えなかった。




そして朔斗に会わないまま撮影が始まった。




涙を流して良いシーンで良かったって思った。




だって…




朔斗を見ただけで涙腺がゆるんでいく…




何とか腱鞘炎だと告げるシーンを終えた。




仁…朔斗の瞳を見ることが出来なかった。




演技かもしれないけど、その時抱きしめてくれた朔斗が、少し、震えているような気がした。




私の瞳からは演技ではない涙が溢れた。




そして…






「ねぇ、最初に会った時、吹いてた曲吹いて…?」





最後の




最後のシーン…