「あの撮影の日にお義さんが会いに来てたんだ…」




あの撮影の日…




葵が記憶を無くした日―…




「で、札束持って縁を切りに来た。父さんも賛成だって言ってね。本当は父さん知らないのにね…」




俺は言葉が出なかった。




「葵ちゃんはさ、唯一の家族である父さんの存在さえ無くしたんだ…。だから、記憶が無くなったんだと思う。」




残酷だ…




残酷過ぎる…





「朔斗はさ、どう思う?」




「へ…?」




いきなりの問いに戸惑った。




「嫌な記憶を忘れて笑って過ごすのと、辛い過去を背負って生きるの。どっちが幸せだと思う?」