「でもさー、だったら私の憧れのダブルデートしない? 休日は忙しいんだったら、下校途中にでも。ほら、あのクレープ屋、また新作出したんだ」

ね、という南のお誘いをあっさり断るのも癪(しゃく)で――、それに、ほら。
実際美虎とデートらしいデートもまだ、出来てなかったから、私は張り切って誘ってみることにした。

「一個千円するクレープって、なんなんだよ、それ。
 馬鹿馬鹿しい。原価考えてみろよっ」

第一声は、これ。
とても、彼女からのデートのお誘いに応える彼氏の言葉なんかじゃない。

「――いいもん。
 じゃ、美虎は誘わない。
 私、南と斉藤くんのデートに一人でお邪魔しちゃおう」


だから、私は時折小さな策を練ることにしている。
つまり、頭に血が昇っても同じテンションで言い返さずに、少し拗ねて見せるのだ。


「――そこにも珈琲はある?」

「あったと思うわよ、なんで?」

「珈琲の味くらいは、確かめてやってもいいかな――って思って」


そう。
ただ、美虎は素直じゃないだけ。


前は分からなかったし、南に言っても納得してくれないと思うけど。