「仕事に、戻らなくていいの?」

精一杯搾り出したのは、そんなどうでもいい言葉。

「別に。
 今、客居ないし。
 つか、――俺も、直球勝負がいいと思う。小細工が効く相手じゃないだろ」


「――な、何の話?」


私は真っ直ぐに美虎を見る。
彼は少し顔を背ける。その横顔には、自嘲的とも取れる笑みが浮かんでいる。

「これでも、少しは反省してる。
 今日、陽介に告白しようとしてただろ?
 邪魔して悪かったな」


次は邪魔しねっから、頑張れよ、と。
言い終えて店内に戻ろうとする美虎の、黒いギャルソン用のエプロンの縁を私はがしりと掴んでいた。



「ちょっと、アンタ。
 何、言ってんの?」