声は目の前の4組の教室からだった。


「…ひっ……」


その声の持ち主はどう聞いても男だった。


―嘘でしょう?


男が泣いているところを見るのはどうしても申し訳ない気持ちになる。



「っっひ…」


しばらく待ってみたものの一向に泣き止む気配はない。



だから、思い切って教室を覗いてみることにした。

その時の好奇心によって。






教室にはやはり男子が1人、
机に座って泣いていた。


けれど、もっと暗い感じの人かと思えば至って普通…
いや、それ以上かもしれない。

彼はとても顔の整った好青年だった。


そして彼の涙はとても綺麗だった。
ずっと見ていたいとさえ思った。

そんな風に思う自分がとても惨めだった。





「あの…」


ドアから覗き込みながら彼に声をかけた。


すると彼は体をたいそうビクつかせてこちらを見た。



「…大丈夫ですか?」


彼は訳の分からない顔をしていたが
しばらくして自分が泣いていることに対してだと気づき、
焦り始めた。




「いや、…これは、その…!」


慌てふためく姿に思わず私は口が緩んだ。