「……シズ」


不思議に穏やかな表情を浮かべたままでティートは言った。


「僕は、シズに話さなければならないことがあるんだ」


彼が一言単語を発するたびに、わたしは体が震えるのを抑え唇を噛み、思考回路を正常に留めておくのに苦労した。


「話して。わたしはティートの話、何でも聞く」

「うん」


ティートは体を動かして、わたしとの隙間を少しだけ詰めた。


「きっと、驚くと思う。急にこんな話をしなければならなくなってしまって、申し訳なく思っているよ。

だけど落ち着いて聞いて欲しいんだ。


生まれてからの月日も短く、経験も浅くて行き当たりばったりな未熟で青すぎる僕だけれど、実は僕は、海の底の僕が住んでいる国を治めている、王なんだ。

僕の……シェルライン家は王族の血を継ぐ王家の家系なんだ。

シズに会った時、既に僕は王座についていたんだけど、その時から、僕の国は只ならぬ状況下に置かれていたんだ。


先々代の王はシェルライン家以外の家からの出だったんだけど、彼がそれはもう酷い性質で。

ろくに軍備も整えないまま隣国に戦を仕掛け、敗北し、僕たちの国は併合される寸前になった。

彼が玉座を降りた後も、先代の王は苦労していたよ。戦のせいで国内には物資も少なく、失った命も多かったために、様々なところで痛手を被っていた。

そんな中でなんとか併合されずに凌いでいただけでも彼の功績は大きかったと言えるだろう。


先代の王が過労に没すると、今度は国王を出す番の家系が、シェルラインに回って来た。

適当な人材が、僕程度のものしかいなかったんだ」


戦の言葉に、数年前の我が国の、凄惨な状況が思い出される。