その日、話していられる時間が終わると、わたしたちはまた次の約束をした。


「また明日」

「また明日」


そうしてわたしは防波堤の階段を駆け上がり、門を入って砂利道を歩き、這うように家の階段をのぼって自分のベッドに潜り込む。


そんなあとに簡単に眠れるはずもなく、灰色の天井にはティートの言葉や表情のひとつひとつがくっきりと浮かんだ。

瞳とウロコの色。
髪のうつくしさに肌の光り具合。


うつくしい男がいるものだ、と思った。
彼には兄弟がいると言っていた。容姿のよく似た兄弟がたくさんいるのだと。
この世のものとは思えない遺伝子だ。



そしてそんなことを思っている自分が、ティートと出会う前の自分とは、違ってしまっているような気がすることにわたしは小さな不安を覚えていた。

今までは、同年代の男の人となど、まともに話をしたことすらそうそうなかったのだ。

なのに、ただ話をするというだけのことがこんなに楽しい。
いや、話をしないとしても、彼と会えるというだけのことが嬉しい。



不思議な気持ちだった。

新しい感情というものが、こんなにも突然に現れてよいものなのか、と思った。