俺は、人間に言わせるところの悪魔だ。

漆黒の翼と髪。禍々しき角。紫の瞳を持つ者。

災いの源であり、悪の根源。

しかし、俺は悪魔ではない。




遠い昔。

今となっては、どれほど昔なのか見当もつかないが、俺は天界に暮らす天使だった。

そうだ。

確かに天使だった。


それが何故、こんな姿と成り果て鏡に封印されたのか…

長い時を隔てた今となっては覚えていない。

ただひとつ、覚えているのは、俺が封印されていた『闇』を目覚めさせたということ。

闇の傀儡となり、欲するままに鮮血を浴び、数多の命を奪ったこと。

俺が望んだのだ。

闇の力を。

理由は覚えていないが、確信がある。



俺は天界に災いをもたらし、大神の怒りをかい、闇と共に封印された。

死ぬことも、狂うことも許されず、いったいどれだけの時を鏡の中で過ごしたことだろう。

いつしか人間界に落ち、内に秘めたる悪しき力故、数多くの人間に災いをもたらした。