いつまでもドアの側に立ち尽くしていたわたしを、兄が呼んだ。

「心配かけてごめんな」

無言で近付いたわたしに、兄は包帯の巻かれた手を差し延べて涙を拭いてくれた。

「お兄ちゃんが無事でよかったっ」

涙はなかなか止まらなかったけど、兄はそんなわたしをずっと静かに見守ってくれた。











やっぱり、兄は本物の兄だ。

そうじゃなきゃ、こんなにも胸が潰れる程、心配したり安心したりできるはずがない!

少しでも悩んだ自分が馬鹿みたいだ。



「そういえば、お母さんは?」


やっと落ち着きを取り戻したわたしは、やっと母がいないことに気付いた。

「父さんと一緒に入院手続きと、その支度に出て行ったきりだよ」

「そっか。きっと、着替えを取りに家に戻ったのね」

「…父さんも聖羅も、仕事や学校を休ませて悪かったな」

「何言ってるのよ!トラックの居眠り運転手が全部悪いのよ!」