「お兄ちゃんっ!?」


わたしは急いで病院に駆け付けた。

電話で話した母はかなり錯乱していて、それだけで兄が巻き込まれた事故の惨状がよく伝わってきた。



信号無視のトラックが、直進する兄の車にノーブレーキで突っ込んだ。


それだけ聞けば、兄が生きてくれていただけでも奇跡といえるだろう。

―― 死なないでっ。お兄ちゃん!



わたしは涙を懸命に堪えながら、受付に兄の所在と安否を確認した。



ところが…











「聖羅。わざわざ来てくれたのか」


「…お兄…ちゃん‥?」


兄は、包帯こそグルグルに巻いてあるものの、元気な笑顔でわたしを迎えてくれた。

「僕は相当悪運が強いみたいだな。車は見る影もないけど、僕はこの通り、骨折くらいで済んだんだから」

「………」

「聖羅?」

普段通りの兄の笑顔を見ていたら、気が弛んで涙が出た。

「よかった…本当に‥」

―― 失ってしまうのかと思った。
こんな、突然に。


「…こっちにおいで」