「いってきまーす!」



朝食を終えたわたしは、教科書を詰め込んだ鞄を持って、いつもより遅く家を出た。

晴れた夏の空。

いつもの通学路。



なのに…


何か違う。



違和感を感じながら、それでも早足で歩く。

15分も歩けば学校だ。





―― 誰もいない。

いくら普段より時間が遅くても、1人も人がいないなんてやっぱり変だ。

それに、太陽は照り付けているのに、暑さを感じない。



―― こんなことができるのは‥


「ディガルね!いるんでしょうっ?」

わたしは立ち止まって辺りを見回した。

「わたしはここにいる」

突然背後から声がした。

「ディガル!」

わたしは振り向き彼を睨んだ。

「朝から勇ましいな、セーラ」

ディガルは唇の端を上げて笑う。

「なんでこんなことするのよ。悪戯ならやめて!」

わたしは、掴み掛からんばかりに彼へと詰め寄った。

「聞きたいことがあったのだ。だから空間を閉鎖した」

「…閉鎖って‥」

「おまえの兄は何者だ」

「えっ?」