「車で送ってやろうか?」

寝不足という説明では、兄の心配は解消されなかったらしい。

「大丈夫だってば。若者に夜更かしはつきものなんだから」

わたしは更に笑って、洗面所から兄を送り出した。

「あんまり無茶するなよ」

「うん。ありがとう」

なかなか笑顔を見せない兄に、こっそり苦笑をもらしつつも、温かな気持ちが溢れてくる。

「じゃあ、行ってくるな」

「いってらっしゃーい」

小さくバイバイするわたしの頬に、兄は軽いキスをした。



普通の兄妹は、こんなふうにキスなんてしないんだろう。

だけど、わたし達は時々、挨拶代わりのキスをする。

それは幼い頃、戒が兄になった時から続いてる。


―― 悪いことじゃないよね?