その後、私にはお友達が一人出来た。名前は朝木若妻(アサキ ワガツマ)。結構変わっている名前だから、覚えていたのだ。明るめの茶髪に、メイク道具に彩られた整った強気そうな顔。私とは正反対の人間だろう。

「それにしても、黙ってちゃ駄目よ。自分から話しかけなきゃ、友達できないよ?」

若妻はそういうが、私はあんまり興味がない。

「私には、若妻と宮本君がいるから大丈夫なの。」

「ハァ~・・・ま。罪音はそういう人間だよねぇ。」

「そうなの。だから、お友達100人よりとっても親しい友達2人の方が良いの。」

「ま、そりゃあたしもそうだけどね。」

若妻は苦笑して言う。と、そこで若妻のケータイがなる。

「ありゃ、ごめん、ちょっと彼氏が・・・・」

「ううん、いいの。いいのよ。」

「じゃ、また後でねー!!!」

走り去って行く彼女に正座で手を振り、私は弁当箱を仕舞う。すると、こっちに早歩きで歩み寄る彼を見つけた。

「罪音!!!!!!」

「どうしたの?」

ぼんやりと聞くと、彼はどもりながら何かを言おうとしていた。

「ん、あ、えと、と、とにかく来い!!!!」

普通の人が見たら、暴君とでも言うのだろうか。私の腕を引っ張って、人気のない屋上にやってきた。

「なぁに?」

彼は大きな、それこそ学校中に響き渡ってしまうんじゃないかってくらい、それこそ、学校○行こう!みたいに言った。

「お、お、俺と付き合え!!罪音!」

「何に?」

その返答に、彼はドリ○のようなノリでズルッと転んだ。

「どうしたの?お買い物に付き合ってほしいの?」

しゃがみながら言うと、彼はいきなり顔をバッと上げた。彼の顔が至近距離にある。私は特に何も気にしなかったが、彼は湯気でも出るんじゃないかってくらい顔を赤くした。そして、顔をそらした。

「ちっ・・・違う!!その、かっ・・・か・・・・彼女に、なれ、と・・・・」

「え?それって、恋人同士って意味なの?」

「そそそ・・・」

そうだ、と消え入りそうな声で言う。私は混乱しつつも、何故か質問攻めをしていた。