物でも投げるように軽く手を離し、浮いたカイトの体がドサリと落ちる。

ミラは慌てて駆け寄った。

「ニル!!何を?」



やめて、と言いたかったが動けなかったのもあり、必死に見上げると。


ニルはミラを見つめ不思議そうな顔をした。



「なぜこの男を庇うの……?」


この男は君を利用した。

傷つけた……。


生かす価値もないだろう?


そう言うように見つめられ戸惑う。




「ニルが……存在してる事を教えてくれたのはカイトだよ?」


「罠だね……、もし俺が現れなかったら、この男はミラを殺してたよ」


「そんな………」


「違うかどうかは聞いてみればいい。

本心を晒すとは思えないけどね」




ニルは緩やかに降り立ち、ミラをカイトから遠ざける。


倒れこんだ彼がもぞっと動き、這うような格好のままミラたちを見つめ笑った。


「お前が魔王か、俺は…………本当にツイてる」



笑う意味がわからず困惑するミラを置いて、ニルが少し前に出た。



「…………魔王だから何?
言っておくけど、人間ごときに枷など填められないよ?」