“彼”は美しい人、

“彼”は魔性、

“彼”は黒い翼に埋もれて眠る、

“彼”は時間を刻まない、
“彼”はめったに笑わない、

“彼”は世界を心の底から愛する…………魔王。




わたしが愛するただ一人、

腕が伸びたのはきっと意識よりも速かった。








わたしを抱いた腕は、

確かな暖かさとキラキラと輝く光の粒子を纏う…………。



おかえりなさい。と言いたかったけれど唇は思い通りにならなくて、モゴモゴとしか言えなかった。









力強い抱擁が永遠に感じるほどに、

揃いのものが合うように、ピッタリと腕に納まる。






嬉しさのあまり、はりつめていた緊張が一気に解け、カクリと落ちた腰は“彼”が支えてくれた。














魔王が帰還する…………。