ある日。
2人は少しだけ会話をしました。
彼は尋ねました
「君はどうしてそんなに嘘つきなんだ?」
彼女は笑顔で答えました
「私は嘘なんてつかないよ」
その答えに、彼はとても楽しそうに言いました
「嘘つきが、"自分は嘘を吐かない"と言うのか…
いいね、その矛盾のない嘘。最高だ」
彼は笑いながら、もう一度尋ねました
「それなら、俺のことは好き?」
彼女は笑みを崩さないままこう返しました
「好きだよ」
本当は嫌いでした。
本当のことしか言わないこの彼のことが、とても嫌いでした。
その答えに、彼の笑い声は一層強くなりました。
そして、笑いながら彼はこう言いました。
「俺は、君のこと嫌いだよ。
だって、嘘つきだから」
彼女は彼のこういうところが嫌いでした。
他人に面と向かって嫌いと言うなんて、なんて酷い男だろう…。
厳しいことばかりの彼の言葉は、優しいことしか言えない彼女にとっては、
とても酷いものに思えるのでした…。