そこへ目を遣ると高級車が止まっていて、生徒皆が見ている。
車から出てきたのは、羽井祐馬。
その後ろからは柚の姿。
表情は見えなく、俯いている。
俺の姿に気付くと誇らしげに近寄ってくる。
「よ、倖谷春樹」
「……」
「無視かよ、まあ良いや」
俺だってお前なんてどうでも良い。
真っ直ぐ柚を見つめているとゆっくりと顔が上がった。
「おはよう」
それは本当に弱々しい笑顔。
抱き締めてしまいたかった。
触れてしまいたかった。
「…はよ」
そう告げた後「行くぞ」という声に従う様に後ろから付いていく。
その背中を見つめていると佐倉からの視線を感じた。