彼だけが立ち上がる。 繋がれていた温かさが冷たい風に流されていく。 彼女の指が震え、はっと顔を上げる。 遠ざかる背中。 彼女が振り向き、口を開くが、動くことはなく。 顔を下げると同じに唇は閉じた。 小さい点になってしまった彼から途切れる声が聞こえる。 ぽとりぽとり 彼女の涙が生まれては砂に沈んだ。 .