・ ・ ・







「……め……ま……」



(……誰?)



「姫……ま……!」



 かすれかすれに聞こえてくる声。

(私を……呼んでる?)





「姫様!」

「ん……

 んあ?」

 重い瞼を持ち上げるアン。

 ボヤける視界には数人の人影がかすれて見えている。



「こ、こは……?」

「安心下さい。
 お嬢様の寝室でございます」

「寝……室……?」

「はい」

「寝室?!」

 いきなり驚き飛び起きたアンは、周囲をグルリと視線を往復させた後、隣で心配顔で見てくる執事へ顔を向ける。



「アンお嬢様、本当にご無事で何よりです。
 まさかお嬢様が戻られるなんて、神様は私たちを見捨ててはいなかったのですね」