そうすれば、アンはこの国の王女として元通りの人生へと戻ることになる。

 それはアンにとって、強いてはこの国にとって最高に喜ばしい事だ。





「でも、俺は……」

 ノアの心には、既に1つの決心がついていた。



 ……それが、



 ・ ・ ・



「さらば、俺のプリンセス……」



 城門前。

 真紅の鎧を再装着した姿で門の前に立ち、旅荷物を片手に、空いた方の手で敬礼して振り払う。

 そして国を背に、ノアは目の前に続く道をただあるがままに歩いて行く。







 決して、振り返ることはなかった……