「はい。」
「ありがと。」
再び慧は隣に腰掛けた。
「俺は別に迷惑って思ってないよ。」
「………。」
「そんな生半可な気持ちで"一緒に生きよう"って俺が言ったと思った?」
私は静かに首を振った。
「第一、碧は考えすぎなんだよ。」
「考えすぎって。」
「碧の目が悪いなら、俺が碧の目になればいい。俺の耳が悪いなら、碧が俺の耳になればいいだけだよ。」
「耳悪いの?」
「例えばの話だよ。」
「あっ、そっか。」
見えないことの辛さや淋しさを私は甘く見ていたかもしれない。自分に降り懸かること以上に誰か別の人へ起こる困難を目の当たりにすると一層心が痛む。そして、その相手が自分より大切な人なら尚更だ。


