幕末純想恋歌

「そういえば一君は?」

キョロキョロと沖田が見回す。

そして壁際で手酌の酒を飲んでいる男の人に視線を止める。

「あ、いたいた。一君もこっちおいでよ。一人で静かにお酒なんて寂しくないの?」

彼は、一瞥し溜息をつきこちらに来た。

「おまえらこそ少し静かにできんのか。」

「だって、こっちのほうが楽しいでしょ?今、女の子いるし。」

にっこりと沖田。

ハァと溜息を再びついて葵に向き直った。

「斉藤一だ。」

「菖藤葵です。よろしくお願いします。」

斉藤一、と名乗った男は藤堂よりは高く、沖田たちよりは低いくらいの身長だが華奢な感じがしてきれいだった。

そして鋭い空気を纏っていた。

「それだけ?もっと他に言うことないの?」

「無いが。何か文句でもあるか。」

「ううん。ないよ?」 

なんか空気が……。

「さ、斉藤も一緒に飲めよ。な?」

「…あぁ。」

永倉の助け船でいくらか空気が良くなり、皆また飲みだした。