幕末純想恋歌

ー……夕刻。

「…葵ちゃん、葵ちゃん。夕餉の時間だよ。」

沖田は約束通り葵を迎えにきていた。

が、いくら声を掛けても返事がない。

「…葵ちゃん?入るよ?」

そのため返事はなかったが、一応断りは入れて部屋に入ることにした。

障子を開けると、まず目に飛び込んできたのが、丸くなった葵だった。

「葵ちゃん!?」

具合でも悪くしと倒れたかと慌てて駆け寄ると、スゥースゥーと規則正しい寝息が聞こえてきた。

どうやら眠っているだけのようだ。

安堵して、葵を起こそうとして思わず手を止めた。

なぜなら、葵の目元には涙があり、頬にもそれの後があったから。