屍の孤島

「ゆえぇぇ…」

しゃがれた声で、祖母が夕映の名を呼ぶ。

しかし、もう優しかった祖母の声ではない。

「ゆぇええぇぇえぇ…」

夕映を見つめる祖母。

しかし、もう温かかった祖母の眼差しではない。

白濁した、感情を感じさせない眼。

ここに来るまでに何度となく遭遇した、ゾンビと同じ眼…!

「ゆえぇぇえぇ…そのにく…くわせろぉぉおぉ…!」

「いやぁああぁあぁぁぁっ!」

相手が大好きだった祖母である事も忘れて、夕映は病室から走り出していた。

こんなのってない!

私は命懸けでここまできたのに!

おばあちゃんの事だけを心配してここまで来たのに!

こんな酷い事があっていいのっ?

無我夢中で廊下の突き当たりまで走り、床に蹲って嗚咽する。

悪夢だった。

もう慕った祖母はいない。

あそこにいたのは、祖母と同じ姿をしただけの生ける屍だった。