屍の孤島

どこか様子がおかしい。

薄暗い病室の中、夕映は目を凝らす。

ピチョピチョと、滴の落ちるような音。

見ればベッドの下に、血溜まりができている。

「お…おばあちゃん…?」

思えば、見るべきではなかったのかもしれない。

しかし彼女の手は、衝動のままに祖母のかけている布団を剥ぎ取り。

「あぁぁ…!…ああぁあぁぁあぁぁっ…!」

その目で見たものに声を震わせる。

布団の下の祖母の体は、腰から下…下半身がなかった。

ゾンビによって食い荒らされていたのだ。

「いっ…いやぁあぁぁあぁあぁっ!!」

普段は感情を表に出さない夕映が、慟哭した。

慕っていた祖母が、いつも優しかった祖母が、どうしてこんな惨たらしい最期を迎えなければならないのか。

あまりにも悲惨な死に様にボロボロと涙を流し。

「…………ゆえ…」

夕映は自分の嗚咽に混じって聞こえた、微かな声を聞き逃さなかった。

涙でクシャクシャになった顔を上げ、彼女は祖母の方を見る。

こんな無惨な、致命傷を負わされた体で尚、祖母は夕映を見つめていた。

…白濁した眼で。