階段を昇り、足音をさせぬよう慎重に歩く夕映。

姿こそ見えないものの、やはりゾンビは上の階にもいるようだった。

どこからともなく聞こえてくる摺り足の音、そして呻き声。

その声を時にやり過ごし、時には振り切りながら。

ようやく夕映は三階に到着した。

祖母の入院している301号室は、三階に上がってすぐの所にある。

病室の名札には、祖母の名前。

…いつも通い慣れた病室なのに、やけに緊張した。

「お…おばあちゃん…」

掠れた声で呼んでみるが、中からの返事はない。

「は…入ります…」

静かに扉を開き、夕映は病室へと入った。

寒気がするほど静まり返った祖母の個室。

その部屋の奥、窓際にベッドがある。

そこに祖母の姿はあった。

布団をかけ、穏やかな表情で眠っている祖母。

…その寝顔を見て、夕映はほっと安堵の溜息をついたのだが…。