覚悟を決めて、夕映は病院の入り口へと歩いていく。

既に通い慣れた病院。

しかし今日は、まるで違う場所を訪れたかのような違和感を感じる。

別の病院に来た、などというレベルではない。

まるで打ち捨てられた廃墟。

入り口のガラス張りの扉は割れ、床にはそのガラス片が散乱している。

その扉を開けて中に入ると。

「っ……」

思わず夕映は口元を覆ってしまった。

大抵病院は薬品の臭いが充満しているもの。

だがこの病院内は、薬品臭が尋常ではない。

恐らく薬品の瓶が幾つも割れたりして、その臭気を漂わせているのだろう。

普通瓶が割れれば、看護師なり医師なりがすぐに片付ける筈。

が、この臭いはそれがされていないという事。

既に医師や看護師はいないという事だ。

それが何を意味するのか…。

即座に悟って、夕映はゴクリと唾を飲み込んだ。