その後も何体かのゾンビに遭遇したものの、同じ要領でやり過ごす。

ここまでは順調だった。

かすり傷一つ負わないまま、彼女は遂に。

「……」

白い三階建ての建物の前まで到達する。

建物の屋上の大きな看板に文字が書かれていた。

『陰島病院』

この陰島で唯一の医療機関だった。

内科、外科、小児科からなる病院。

この過疎化が進む島では、それ以上の規模は望むべくもない。

もし大病を患ったり、この病院では手に負えないような手術が必要な時には病院の医師に紹介状を書いてもらい、本土の大きな病院に行く事になる。

もし祖母が本土の病院に入院していれば、夕映も祖母もこんな異常事態に巻き込まれる事もなかっただろうに…。

今更考えても詮無い事とはいえ、夕映はそんな思いを巡らせずにはいられなかった。