梨紅はというと、尚も苛立っている。
船の揺れも勿論なのだが、彼女の前の席に座る男が喫煙しているのだ。
連絡船の船内は禁煙。
だというのに男は気にする様子もなく、マルボロのケースを取り出して一本咥え、よく使い込んだ印象のダンヒルのライターで火を点ける。
深く息を吸い込んだ後、しらしらと吐き出される紫煙。
その煙が船内に漂う。
当然、男の一番近くに座っている梨紅にも紫煙は漂ってきた。
髪の毛にも、服にも、煙草の煙の臭いが染み付く。
梨紅は煙草の臭いは勿論、喫煙者も嫌いだった。
「ちょっと!」
ヘッドホンから音洩れしている自分の事は棚に上げ、彼女は前の席に座る男に対して噛み付くように言った。
「船の中は禁煙なのよ!壁に書かれている文字が見えないの?煙がこっちに来てるのよ!さっさと消しなさいオッサン!」
言い分は確かに梨紅の方が正しい。
しかしその言い草は、あまりにも横暴で礼儀というものを知らなさ過ぎた。
船の揺れも勿論なのだが、彼女の前の席に座る男が喫煙しているのだ。
連絡船の船内は禁煙。
だというのに男は気にする様子もなく、マルボロのケースを取り出して一本咥え、よく使い込んだ印象のダンヒルのライターで火を点ける。
深く息を吸い込んだ後、しらしらと吐き出される紫煙。
その煙が船内に漂う。
当然、男の一番近くに座っている梨紅にも紫煙は漂ってきた。
髪の毛にも、服にも、煙草の煙の臭いが染み付く。
梨紅は煙草の臭いは勿論、喫煙者も嫌いだった。
「ちょっと!」
ヘッドホンから音洩れしている自分の事は棚に上げ、彼女は前の席に座る男に対して噛み付くように言った。
「船の中は禁煙なのよ!壁に書かれている文字が見えないの?煙がこっちに来てるのよ!さっさと消しなさいオッサン!」
言い分は確かに梨紅の方が正しい。
しかしその言い草は、あまりにも横暴で礼儀というものを知らなさ過ぎた。


