梨紅が同年齢か年下だと見ていたその女性。

小柄なせいでよく間違われるのだが、実は梨紅よりも年上の、れっきとした社会人だったりする。

上原 奏(うえはらかなで)。

25歳のOL。

有給休暇をとって一人旅の真っ最中。

のんびり屋で大雑把の割には小心者、特技はどこででも寝れる事と豪語するだけあって、この船の揺れにも動じる事なく熟睡中。

そんな性格の彼女は、海外旅行や有名な観光スポットよりも癒されるようなのんびりした場所を好み、旅行雑誌を調べて陰島の存在を知った。

景色がよく、海の幸が豊富でのどかな小島。

即決で陰島に向かう事を決め、島内にある旅館に予約の電話を入れたものの、何故か電話は繋がらなかった。

その事に首を傾げたものの、マイペースな彼女の事。

だったら島についてから飛び込みでどこか泊まる所を探せばいいと、こうして揺れる船に飛び乗ったのである。