元々奏は、体力には自信がない。

勉強は人並み程度には出来たが自慢できるほどではなかったし、スポーツなどは更に輪をかけて自信がなかった。

素早く逃げ道を見つけ出し最短ルートで脱出、などというのは彼女の得意とする所ではないのだ。

何度も何度も建物内で袋小路にはまりそうになり、引き返し、また行き止まりに当たり。

そんな事をしているうちに奏は逃げ場を失い、ゾンビ達に包囲されて建物内に取り残されてしまった。

恐らくこの建物内にいるまともな人間は、もう奏だけだろう。

他の仲間達のように要領よく逃げられなかった自分を悔しく思う。

仲間はこの建物内にはいない。

誰かに頼る事はできない。

ここからは、自分の力だけで生き延びなければならないのだ。