屍の孤島

夕映の言葉に、秀一と奏は顔を見合わせた。

…正直に言って、彼女の祖母の生存は絶望的と思われたからだ。

健康な人間でさえ、あのゾンビの群れから生き延びるのは至難の業と思われる。

何せ数が数だ。

その上、人間を噛み殺すような凶暴な性質。

見つかったら最後、集団で襲いかかってきて食い殺されるだろう。

入院している老人が、とても逃げ延びられる相手ではないような気がした。

しかし。

「行こう」

小野寺が夕映に向かって頷きかける。

「でも…」

奏はどちらかと言えば反対だった。

夕映が祖母の事を心配する気持ちはよくわかる。

奏だって、彼女の為に病院に立ち寄ってあげたい。

だが、この陰島は既に無法地帯なのだ。

脱出の為に、出来うる限り不必要な場所には立ち寄るべきではなかった。