どうせ私はもう駄目だ…。

体がジワジワと寄生虫に蝕まれ始めている。

少しずつ意識も混濁し始めているのだ。

遅かれ早かれ、彼女の体はゾンビ化する。

助けられた所で、結局はゾンビとなって秀一を襲う事になってしまうだろう。

ならばこのまま井戸の底にいた方がいいのではないか。

それに…梨紅の顔までもが、土気色になり始めている。

かつて天才子役として、可愛らしい、愛らしいと持て囃されてきた梨紅。

その顔が醜い屍となった姿を、他人に晒すのはつらかった。

井戸の底は、秀一からはよく見えない。

ここにいれば醜くなった姿を見られる事はない。

それは華やかな世界に一時期でも身を置いていた、梨紅のせめてものプライドだった。