振り向き様、梨紅はニッと不敵な笑みを浮かべた。

直後、立てないと思われていた彼女は素早く立ち上がり、山道を登りきろうとしていた先頭のゾンビの胸を両手で強く押す!

そもそもが不安定なバランスのゾンビだ。

しかも急な傾斜の山道。

非力な梨紅が押しただけでも彼は体勢を崩し、山道を転がり落ちていく!

一体が転倒して転がり落ちると、後はもう止められない。

次々と巻き込まれ、山道を転落していくゾンビの群れ。

…彼らはまんまと梨紅の『演技』に騙されたのだ。

「やれやれ…」

ホットパンツの尻についた泥を払い落とし、梨紅は溜息をつく。

港で遭遇した時には恐れおののいたゾンビだが、これだけ長い時間逃げ回っていると、次第に恐怖心も薄れてくる。

腕力が高く醜悪な姿をしてはいるものの、動きは緩慢で足も遅いゾンビ。

必要以上に恐れなければ、梨紅のような知恵の回る女性ならば何とか対処法もあった。