そして現在。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ!」

梨紅は夜の山道を、息を乱しながら駆け登っている。

彼女を追って来るのは、腐臭のする息を吐き出しながら摺り足で歩く亡者の群れ。

梨紅という若く瑞々しい肉体を食らおうと、彼らは徒党を組んで追って来る。

決して諦めない。

決して逃がさない。

獲物を追い詰めるまで、ゾンビ達は執拗に追跡してくるのだ。

急な傾斜の山道を登りきる頃。

「あっ…!」

梨紅はガクリとその場に跪く。

蹴躓いたのか、それとも足が痙攣でも起こしたのか。

地面にペタリと座り込む梨紅。

もうゾンビの群れはそこまで迫っているというのに、立ち上がれない。

ここぞとばかりに殺到するゾンビ達。

しかし…。

「バーカ」