桜庭梨紅という名前がテレビや雑誌に頻繁に登場するようになり、ゴールデンタイムのドラマに主役として出演するようになった、人気絶頂の頃。

梨紅は芸能界を引退する事にした。

まだ中学生の時だ。

これからスターへの道を歩んでいくという時だったのに、梨紅は自ら芸能界から去る事を決めた。

もう限界だった。

…憧れて入った世界だった。

お姫様のような衣装を纏って、皆に羨ましがられるような仕事をする芸能界。

しかしその真相は、足の引っ張り合い、上に上がる為に蹴落とし、足蹴にし、他人を踏み台にするような醜い世界…。

純真だった子供のうちにそんな世界で人間の汚い面を嫌というほど見せられた梨紅は、精神的にボロボロになっていた。

人間不信。

彼女は他人を信じられなくなっていたのだ。