彼もまた、ここに来るまでに何度もゾンビと遭遇した。

小野寺を見るなり、容赦なく襲い掛かってくる蠢く死体。

まるで人の姿をした猛獣だった。

精神科医の小野寺は分析する。

といっても、分析の必要もないほどゾンビの行動パターンや思考は単純明快だった。

本能のままに行動する。

物音や悲鳴が聞こえればそちらに赴き、空腹を感じれば動くもの全てを襲う。

食欲だけで動いている存在。

仲間意識や思考などは皆無。

限りなく知能は低く、ゾンビ化して時間が経過すれば言語や生前の記憶も著しく低下する。

捕らえ、食らうだけの存在。

極めて原始的な怪物だった。