ガタン、という聞き慣れない物音でリスティーヌは目を覚ました。


「リスティーヌ様……」


ふと気がつけば目の前には見慣れた二人の侍女が自分を心配そうに覗き込んでいた。


そして、その不安気な表情を見たリスティーヌは一気に現実へと引き戻された。


「ごめん、ディアナ。セレーネ。私は大丈夫よ。」


尚もガタガタと揺れる馬車の中で、彼女は無理に笑顔を作り答える。



今、この馬車は軍事大国のセルスト帝国へと向かっている。


理由はただひとつ、ラキアヴェル王国の第4王女リスティーヌ・ラキアヴェルがセルスト帝国への後宮入りが決まったからである。


しかし、仮にも一国の王女の輿入れであるにも関わらず、そのお供は二人の侍女と一人の御者、そして三人の護衛だけ、という何とも質素な一行であった。