それは何ら変わりのない冬の日のことだった。


数日前の吹雪の影響で残った積雪の中、16歳のリスティーヌは白い吐息を弾ませて街の中を走っていた。


「おはようございます、リスティーヌ様!!」


彼女の姿を見かけた国民達は、次々とリスティーヌに声をかけていく。


そして、彼女もまた華が咲き誇るかのような笑顔でそれに答えていった。


「おい、リスティーヌ!早くしろよ!!」


ふと声がした方を見れば、王国軍の仲間達がリスティーヌに笑顔で手を振っている。



毎日が楽しかった。


両親は既に他界してしまい、姉からの扱いは冷たかったが、それでも国民や仲間達の温かさにリスティーヌは心地よさを覚えていた。


そして、出来ることならば、このままどこにも嫁がずこの地に骨を埋めたいとさえ思っていた。


あの日までは。