――そんな皇帝陛下の悩みを知っているのか、はたまた全く知らないのか。


あの謁見を終えたリスティーヌ達は、ラキアヴェルの姫のために、とあてがわれた部屋の中で存分に爆笑していた。


ちなみに、通されたのは“深紅の部屋”と呼ばれている部屋で、皇太子陛下の後宮内で一番南に位置している部屋らしい。


名前の割にはそこまで赤尽くしという訳ではないが、家具や絨毯、その他食器や花瓶に至るまで全てが赤のアクセントを入れたもので統一されているのは確かだった。


「…あ、あれ。本気で、言ったのかなっ…」


しかし、当のリスティーヌは、特にその部屋の感想を言うわけでもなく、ただひたすらに笑い続けている。


そして、そんな彼女の様子を見ていたセレーネは、赤いカツラを脱いでリスティーヌに憤然と抗議した。


「リスティーヌ様!笑っていないでさっさと着替えて下さいっ!」


実際、未だセレーネは無理矢理着せられたリスティーヌのドレスを身につけていた。


彼女としては一刻も早く着替えたいところなのだが、リスティーヌから目を離せば何をしでかすか分からない。


そのため、リスティーヌがきちんとしたドレスに着替えたことを見届けてから自分も着替えようと思っていたのだが…どうやらその考えは甘かったようだ。