とりあえず、リスティーヌとディアナは侍女として頭を伏せ、セレーネも顔を隠しているため誰もが気づかなかったが、彼女達の顔は異様に赤かった。

さらに、瞳には涙を貯めていて、唇を強く噛み締めているようだ。



「……ぶふっ!」

不意にディアナから奇怪な音が聞こえた。

周りの人間は特に気づかなかったようだったが、それを聞いたリスティーヌが、小言で彼女を諌める。


「ば、馬鹿、堪えなさいよ…っ」

「だ、だって、ラキアヴェルの天使って……ぷっ」


しかし、心なしか彼女の声もまた震え、ナディアに至っては再び吹き出す始末だ。

ある程度、彼女達から玉座への距離が遠いため大事にはならなかったが、一国の主の発言を笑っているなどと知られたなら、死罪も有り得るだろう。