「だが、美の女神すらも怖じ気づかせるという、“ラキアヴェルの天使”の顔を見れぬとは残念な話だ。」
笑みもなく、本心かどうかも分からぬ言葉を淡々と紡ぐ壮年の男性。
彫りは深く、顔立ちは整っているが、どこか冷たい印象が彼からは感じられた。
「――その点については、我が主に代わり、私めが謝罪を申し上げます。」
そして、リスティーヌと同じように“リスティーヌ様”の脇で伏していたディアナが用意していた通りの発言をするが、その声はわずかに震えていた。
恐らく、その場にいる誰もがセルスト陛下を目の前にした緊張からの震えだと思っただろう。
――だが、リスティーヌとセレーネだけは違かった。
「よい。仕方のないことだ。“結婚直前の女性は夫以外に声をかけたり、顔を見せてはならぬ”というラキアヴェルの風習を無下にするつもりもないのでな。」
セルスト陛下からの言葉にディアナは感謝を述べるが、依然として彼女の声は震えている。
それどころか、リスティーヌやセレーネの肩も微かに震えていた。


