秘密な花嫁~旦那様は同い年~番外編

もう大丈夫なのにね。


「もう、美結の癖だな。俺の心臓に手を当てるの」


「ごめんね。嫌だった?」


「いや。美結に手を当てられると、心臓が元気になってる気がする」


「ほんと?よかった」


それから愛人からの言葉はなく、かわりに聞こえてくるのは静かな寝息。


「早く、仕事が落ち着けばいいのに」


愛人が疲れて帰ってくるたび、倒れてしまうんじゃないかって怖くなる。


「心配だよ、マー君」


この前病院に定期検診に行ったときも、「疲れたときは無理をしないこと」ってお医者さんに言われたし。


「でも、無理しちゃうんだよね」


パパの仕事を見てるから、どんなに疲れていても社長さんは休めないってことくらい分かってる。


「ちゃんと支えてあげなきゃ」


せめて家にいるときは仕事を忘れられるような環境を作ってあげよう。


習字を始められる楽しさ、愛人の体調の不安、両方感じながらその日は眠りについた。