「美結は今日、何してたの?」


愛人がスーツを脱ぎながら、私に聞く。


「今日はね、ママが午前中で仕事終わりだったから、会いに行ってきたの」


「そう」


愛人が脱いだスーツをハンガーにかけるのは、私の役目。


「明日はね、ママのお手伝いしてくるね」


私は今、ママのお菓子作りの教室のお手伝いをしてる。


手伝いっていっても、材料を用意したりするだけだけどね。


「美結、楽しそうだな」


「うん。マー君は、お仕事疲れるよね?」


愛人の少し疲れた顔を見ると、私だけ楽しく過ごしてるのに気が引けて、「ごめんね」と愛人の背中に抱きついた。


「俺も今、すごく充実してる。だから、美結は謝らなくていい」


体を反転させた愛人に、強く抱きしめられる。


「美結には、辛い思いをいっぱいさせてきたから。だから今は、美結が笑っててくれることが一番嬉しい」


「マー君」