「美結、ただいま」


「おかえり、マー君」


いつものようにキスをする。


でもひとつだけ違うことは、ここが病室だということ。


結局私は、検査入院が決まったその日から自宅に戻れず、赤ちゃんと二人病室で過ごす日々を送っていた。


「ただいま、赤ちゃん」


愛人がそっと私のお腹をなでる。


「今日もね、ママとお義母さんから電話もらったよ」


「そっか」


スーツを脱ぎハンガーに掛けた愛人が、私の頭の方のベッドに座る。


家族に病気を告げてから、すぐに私の両親と愛人の両親がこっちに来てくれた。


みんなすごく心配してくれて、日本に帰ったその日から毎日電話をくれるようになった。


「今日は赤ちゃん元気だった?」


「今日は、あんまり。でも、頑張ってるよ」


「ああ。そうだな」